小児期の早期反対咬合治療の意味について album 250

今回は、反対咬合を気にして来院した小学校2年生の小児の症例を見ていきます。反対咬合の矯正治療は、下顎の成長発育を見ながら仕上げていきます。何故なら下顎の成長は女性の場合14歳位、男性の場合は18歳位まで継続するからです(上顎骨の成長発育は10歳位で終了します)。従って、小児期に1期治療で反対の咬み合わせを改善しても、下顎の成長発育が続く間は反対咬合が再発することがあります。特に遺伝的な要因が大きな反対咬合は、下顎の成長発育のコントロールは限界があります。それでは1期治療は経っても無駄になるのかと思いの方もいらっしゃると思いますが、とても重要な意味があります。下顎の成長発育を出来るだけコントロールする事によって、仕上げの2期治療を容易にする事が出来ます。重度の反対咬合になれば2期治療は複雑で長期間となり矯正治療のリスクも高まる恐れがあります。

早期反対咬合の治療の意味
①遺伝的な要因のコントロールは不可能ですが、それ以外の下顎の成長発育を促す要因をコントロールする事により、下顎の成長発育が終わる頃に開始する2期治療の矯正リスクを最小限にする事が出来る。(重度の骨格性反対咬合になると外科矯正を行っても行わなくても矯正治療によるリスクが高まります。)
<参考>
正歯科治療で生じうるリスクや副作用について (クリックHere)
②早期に反対の咬み合わせを改善し、前歯でしっかり咀嚼することにより上顎骨に刺激が伝わり上顎の成長を促す事が出来る。この事も2期治療での矯正治療のリスクを軽減する為にはとても意味があります。
③多くの反対咬合の患者さんは、低位舌と口腔周囲筋のアンバランスが見られます。早期に筋トレを始め口腔筋機能療法(MFT)によって改善する事は安定した咬合を確立する為にはとても大切です。
またリップシールド(口唇閉鎖)を確保し舌の位置を正し口呼吸を改善(鼻呼吸の確立)する事は、矯正治療後のリラプス(後戻り)を防ぐだけに留まらず健康の維持増進・慢性疾患の改善・予防に寄与する等様々なメリットがあります。
④反対咬合を放置すると発音が不明瞭になる場合があります(滑舌が悪い)。反対咬合の原因の一つである低位舌改善のため、舌小帯の切除術が必要な場合もあります。
⑤反対咬合の歯並びに対してのコンプレックスを改善できる
その他
それでは実際の反対咬合の治療をご覧下さい。

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1期治療で反対の咬み合わせを改善しましたが、その後も下顎の前方成長が大きく反対咬合が再発してしまいました。下顎の成長発育が続いている間は仕上げの2期治療は出来ませんので、下顎の発育のピークを迎えるまで筋機能矯正装置を用いて改善を試みましたが下顎の成長発育を抑える事は出来ませんでした。その後、下顎の成長発育のピークを迎えましたので2期治療を開始してワイヤー矯正で反対咬合を改善しました。リテーナーを入れて経過観察をしていますが、咬み合わせは不安定です。低位舌や口腔周囲筋のアンバランスが悪影響を与えているのかもしてません。

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早期に1期治療で反対咬合を改善しましたが、その後下顎の前方成長が強く再発しました。そして、暫くして下顎の発育のピークを迎え2期治療を行い再び反対咬合を改善しました。その後リテーナーを装着しましたが、やはり咬み合わせは不安定です。低位舌や口腔周囲筋のアンバランスが影響している可能性があります。

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早期に1期治療で反対咬合を改善しましたが、その後下顎の前方成長が強く再発しました。そして、暫くして下顎の発育のピークを迎え2期治療を行い再び反対咬合を改善しました。その後リテーナーを装着しましたが、やはり咬み合わせは不安定です。低位舌や口腔周囲筋のアンバランスが影響している可能性があります。

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早期に1期治療で反対咬合を改善しましたが、その後下顎の前方成長が強く再発しました。そして、暫くして下顎の発育のピークを迎え2期治療を行い再び反対咬合を改善しました。その後リテーナーを装着しましたが、やはり咬み合わせは不安定です。低位舌や口腔周囲筋のアンバランスが影響している可能性があります。

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早期に1期治療で反対咬合を改善しましたが、その後下顎の前方成長が強く再発しました。そして、暫くして下顎の発育のピークを迎え2期治療を行い再び反対咬合を改善しました。その後リテーナーを装着しましたが、やはり咬み合わせは不安定です。低位舌や口腔周囲筋のアンバランスが影響している可能性があります。

photo 1413

舌が収まる為のスペースを確保する為に上顎を拡大し、舌の挙上訓練を行っています。上顎を前方に拡大することにより八重歯も回避できます。

photo 1414

遺伝的な要因の大きい反対咬合の成長発育をコントロールする事は限界があります。また、低位舌の改善も筋トレだけでは限界があります。下顎が大きくなる要因として、舌の大きさも関連している可能性があります。

 

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

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