今回は、反対咬合を気にして来院した小学校2年生の症例です。
主な矯正学的な問題点は、
①反対咬合(受け口)
②左側臼歯部交叉咬合(奥歯のかみ合わせが逆)
③顎偏位(下顎が左に3㎜ずれている)
④上顎狭窄歯列弓
⑤叢生(全ての永久歯が並ぶ顎のスペースが足りないので歯が凸凹になる)
です。
それに対する当院の治療方針は
①取り外しの拡大床で左側の奥歯の交叉咬合が改善するまで上顎を側方に広げ歯槽骨の形態修正を行う。
②前歯の反対咬合を改善する為、取り外しの床矯正装置で前方に歯を押し出す
以上のシンプルな治療法で、上顎の狭窄歯列弓を改善し舌が口蓋に収まるスペースを確保し、上顎前歯部の叢生と左側の奥歯の交叉咬合並びに下顎の偏位と反対咬合を改善する事が出来ました。その後、筋機能矯正装置を使用して更に口腔周囲筋のバランスがとれた位置に歯を並べ安定な咬み合わせを確立する事が出来ました。この際、口腔筋機能療法(MFT)を併用して行っています。舌の正しいポジショニングとリップシールド(口唇閉鎖)は安定した歯並びを確立するためにとても重要です。
顎骨の成長発育にある小児矯正は、適切な咬合誘導・咬合育成をする事で不正咬合の重症化を防ぐことが出来ます。躊躇わず早期に矯正治療を開示することが望ましいと思われます。特に、反対咬合や顎偏位を放置するとやがては骨格性の重篤な不正咬合に発展し矯正治療のリスクも上がり治療も複雑で大変になります。顎偏位はやがて顎変形症になると外科矯正(顎切り)になる恐れもあります。
それでは実際の治療をご覧下さい。
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取り外しの拡大床で上顎を広げ永久歯の萌出スペースを確保すると共に、左側の奥歯の交叉咬合並び下顎の顎偏位を改善しました。その後、床矯正装置で上顎の前歯を前方に押し出し反対の咬み合わせを改善しました。
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上顎を先ず側方に拡大し、その後前方に拡大しました。これで舌が正しいポジショニングをとりやすくなります。口腔筋機能療法(MFT)のみでは舌の正しい位置をキープすることは難しいと思われます。
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下顎は何も治療は行っていません。自然に上顎の歯並びに適応して変化します。顎骨の成長発育期にある小児は、極めて適応の能力が高い。