過蓋咬合・顎偏位・側切歯交叉咬合を伴うすきっ歯の部分矯正について album 283
今回は、すきっ歯を気にして来院した小学校2年生の小児の症例です。
主な矯正学的な問題点は、
①上顎中切歯の歯間離開(すきっ歯)
②上顎右側側切歯の交叉咬合(咬み合わせが反対)
③叢生(歯の大きさに対して顎の大きさが小さい為に歯並びが凸凹になる)
④過蓋咬合(前歯の咬み合わせが深すぎる)
⑤下顎が左に1㎜ほどずれている
等です。
当院の治療方針は
上顎のみ治療を希望していましたので、取り外しの出来る拡大床で上顎の大きさを広げて歯槽骨形態修正を施した後、上顎を部分的なワイヤー矯正で歯並びを整える事にしました。その際、顎偏位を改善する為に奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化して、咬合誘導咬合育成を行うように致しました。顎偏位は色々な原因がありますが、奥歯の高さ(咬合高径)が低い方に下顎がずれる事が多いようです。その為に、咬合高径を適正化する事はとても有効な治療法であると思われます。また、顎関節の動き(顆路傾斜)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)が不適切であると奥歯のかみ合わせが悪くなり(早期接触・咬合干渉)下顎と顎関節の成長発育を阻害するおそれもあります。その事が原因で顎偏位や顎関節症を発症することもあります。
それでは治療経過をご覧下さい。
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初めに取り外しの拡大床で上顎を大きく広げました。その後、上顎のみ部分的なワイヤー矯正で右上の側切歯の交叉咬合を修正し歯並びを整え、更に咬合平面並びに咬合高径を適正化しました。その事により、下顎を治療しなくても左側にずれていた下顎は右に移動し顎偏位は改善しました。成長発育途上にある小児は、咬合平面と咬合高径の適正化によって下顎と顎関節の成長発育が正常化され不正咬合が改善されるような適応能力が高い特徴があります。不正咬合に気が付いたら出来るだけ早期に矯正治療を開始しましょう。顎偏位を放置して顎変形症に移行すると外科矯正(顎切り)を併用しないと改善が見込めない場合があります。
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側切歯の交叉咬合が改善していく様子をご覧下さい。奥歯の咬合平面と咬合高径の適正化によって、深すぎる咬み合わせ(過蓋咬合)が改善し下顎が正常に前方発育していきます。上顎の奥歯の咬合高径と咬合平面の変化に下顎と顎関節が適応して正常な発育が促されます。この治療は、適応能力が高く顎と顎関節が成長発育途上にある小児期だからこそ出来る治療と思われます。
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初めに上顎を拡大して舌が収まる口蓋のスペースを確保しています。この治療により口腔筋機能療法(
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下顎は矯正治療を行いませんでした。下顎の中切歯がややねじれていますが、特に治療の希望がありませんでした。今回は、上顎のみ治療を行い上顎の咬合高径並びに咬合平面を適正化しました。結果的に上顎の変化に下顎が適応して正常な発育を促す事が出来ました。適応能力の高い小児期ならではの治療と言えます。
<参考>