抜歯しない矯正治療・・・10歳までなら上顎は育てることが可能 【album 285】

矯正治療のリスクを出来るだけ少なくして非抜歯矯正治療を実現するためには、できるだけ早期に矯正治療を始めることが望ましいと思います。具体的には、上顎の成長発育は10歳前後でほぼピークを迎えますので、小学校1年から4年生ぐらいまでの間に積極的に咬合誘導・咬合育成を行うことがとても大切です。しかし、上顎の成長発育が期待できない5年生以降でも歯を支える歯槽骨の形態を修正して歯列を大きく拡大することにより非抜歯矯正治療は可能です。また、安定した歯並びを獲得するためには、筋肉のバランスがとれた位置に歯を配列していく必要があります。ところが、新しい歯並びに筋肉と咀嚼するための機能が順応する能力は、歳と共に低下していきます。従って、できるだけ順応する能力が高い時期に矯正治療を始めることが望ましいと思われます。

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小学校2年生の時に歯並びを気にして来院した小児です。上下顎共に永久歯の大きさに対して顎の大きさがかなり小さくこのままでは抜歯矯正を前提とした治療になりそうです。上顎の発育は未だ3年ほど見込まれますので、諦めず取り外し式の拡大床で出来るだけ上顎の拡大しました。その後、永久歯の犬歯の萌出スペースを作るためにワイヤー矯正で奥歯を後方に移動しました。その結果、5年生で永久歯の犬歯が萌出しましたが何とか配列することが出来ました。

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下顎は乳犬歯の間に永久歯の前歯が4本並ぶ事になりますが、初診時は3本しか並ぶスペースがありませんでした。そこで取り外しの拡大床で下顎の歯槽骨形態修正を施し大きく拡大しました。その後、永久歯の犬歯が配列するスペースが不足していましたのでワイヤー矯正で奥歯を後方移動してそのスペースを確保しました。その結果、非抜歯で全ての永久歯が並ぶスペースを確保することが出来ました。

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初診時は永久歯の大きさに対してかなり上下顎共に小さく顎偏位が見られました。このまま放置するとやがては顎変形症に移行する事が考えられます。そこで上下顎共に大胆な歯槽骨形態修正を施し大きく顎を拡大しました。その後ワイヤー矯正で奥歯のかみ合わせ(咬合平面)と奥歯の高さ(咬合高径)を適正化して咬合育成・咬合誘導を行い非抜歯で理想的な咬み合わせを構築していきました。

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咬合平面と咬合高径の適正化によって下顎と顎関節の発育を促し、下顎の位置を前方に誘導しています。前歯のかみ合わせも深すぎましたので(過蓋咬合)ダブルアーチを使用して咬み合わせの深さを改善しています。

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咬合平面と咬合高径の適正化によって、下顎の位置を前方に誘導しています。一時的にはかなり出っ歯(上顎前突)気味になりましたが、最終的には理想的な位置に誘導することが出来ました。ワイヤーを除去した後は筋機能矯正装置を用いて、筋肉のバランスがとれた位置にへ歯を誘導して行きます。

 

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

過去の症例はこちら

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