矯正治療に伴う歯肉退縮のリスク回避について【album 288】

今回は前歯の凸凹な歯並びを気にして来院した小学校4年生の小児の症例を通して、歯を移動する矯正治療におけるリスク回避について考えていきたいと思います。非抜歯で凸凹な歯並びを改善するためには歯列を拡大する事が必要となります。歯は歯を支える歯槽骨という骨の中で移動する必要があります。何故なら歯槽骨から歯根がはみ出すと歯肉が退縮し安定な歯並びを得ることが出来ないリスクを伴うからです。その際、成人矯正治療における顎の拡大と小児矯正における顎の拡大に伴う歯肉退縮のリスクには大きな開きがあります。歯周組織の活性が高い小児においては成人と比較して歯肉退縮のリスクが少ないと思われるからです。したがって歯肉退縮を回避して最大限に歯列を拡大する治療は、出来るだけ早期に行った方が安全であると言えるかも知れません。それでは実際の治療をご覧下さい。

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初診時の歯列の大きさを見て下さい。顎の大きさに対して歯の幅が広いために全ての永久歯が並びません。出来れば大切な歯は抜きたくないものです。そこで非抜歯で全ての永久歯を配列するために部分的なワイヤー矯正で歯列の拡大をしながら歯を並べることにしました。但し、全ての歯を非抜歯で並べるためには歯槽骨形態修正を施し歯列を大きく拡大しなければなりません。その際如何しても避けられないのは歯肉退縮のリスクです。成人矯正においては非抜歯で全ての歯を並べる際、移動量が多い歯はある程度の歯肉が退縮が起こる事があります。しかし、歯を抜いて並べる抜歯矯正を選択するよりは、僅かであれば歯肉退縮が起こっても健全な歯を抜歯することに比べれば患者さんのメリットは多いと考えています。

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下顎も上顎同様に歯列がかなり狭い状態です。非抜歯で全ての永久歯を配列するためにはかなりの拡大量が必要となります。年齢を考慮するとかなり大胆な歯槽骨形態修正を行っても、歯肉退縮が起こるリスクは少ないと考えました。そこで部分的なワイヤー矯正で弾力性があり細いワイヤーを使用して弱い力でゆっくり歯を移動して全ての歯を並べることにしました。その結果、非抜歯で凸凹な前歯を全て並べることが出来ました。

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かなりの拡大量でしたが、歯肉退縮を起こすこともなく非抜歯で全ての永久歯を配列することが出来ました。この様に、できるだけ早い時期に矯正治療をスタートする事により歯肉退縮のリスクを回避して非抜歯で安全に歯を並べることが出来ます。不正咬合に気が付いたら躊躇わず矯正医に相談下さい。当院では、術前にCT撮影を行い非抜歯で限界まで顎を拡大し、出来るだけ歯肉退縮のリスクを回避し全ての永久性を配列することが出来るように慎重に計画を立てるようにしています。また、治療に際してはしっかりした骨格分析を行い最高の機能を発揮出来る咬み合わせを構築する為に、奥歯の高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を最適化する治療を行っています。

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

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