咬み合わせが深すぎる「過蓋咬合」を放置すると顎関節に過剰な負荷が加わり顎関節症を発症する場合があります。また、咬み合わせが深すぎることにより口腔内の容積が狭まり滑舌が悪くなり発音障害を引き起こすこともあります。今回は、小学校2年生の小児の症例を通して当院の過蓋咬合治療について考えていきたいと思います。
今回の症例の主な矯正学的な問題点は
①深すぎる咬み合わせ(過蓋咬合)
②下顎が左側に2㎜程ずれている(顎偏位)・・・放置すると将来顔が曲がる顎変形症に発展する恐れがある
③上下顎共に永久歯の犬歯が並ぶための萌出スペースが全く無い(叢生)・・・放置すると八重歯になる
等です。
それでは実際の治療経過をご覧下さい。
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セファロ分析の結果、ローアングルの骨格でありまた顎骨には変形は見られない事が分かりました。また、顎関節にも機能異常は認められませんでした。ローアングル症例は治療後に再び咬み合わせが深くなる傾向がありますので、今回はオーバートリートメントを行い切端咬合状態にして仕上げました。1年ほどで丁度良いかみ合わせになると思われます。
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上下顎共に全ての永久歯が並ぶスペースが足りません。このままでは八重歯となり犬歯誘導の咬合を獲得することは出来ません。この事により将来顎関節と奥歯に過剰な負担が加わり続け顎関節症や高度な歯周病になる恐れがあります。犬歯誘導は、歯ぎしりなどで奥歯に過剰な咬合力が加わらないように奥歯を保護する理想的な咬み合わせです。アイドルの八重歯は可愛いものですが、決して奥歯や顎関節にとっては望ましい咬み合わせではありません。
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初めにとりはずし式の拡大床で上下顎を大きく拡大しました。その後、左右奥歯の高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化する為に部分的なワイヤー矯正治療を行っています。ワイヤー矯正に置いては奥歯の後方移動を行い犬歯のスペースを確保しました。その後、リテーナーを入れ更に顎の偏位を修正しています。全ての乳歯が抜けた後は、マウスピース型の筋機能矯正装置(トレーシステム)を用いて更に口腔周囲筋と歯列のバランスを整えて行きました。
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歯槽骨形態修正で顎の拡大を行いその後部分的なワイヤー矯正で奥歯を後方移動して犬歯のスペースを確保しています。この事により高度の叢生状態ではありましたが、非抜歯で全ての永久歯を配列する事が出来ました。
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歯槽骨形態修正で顎の拡大を行いその後部分的なワイヤー矯正で奥歯を後方移動して犬歯のスペースを確保しています。この事により高度の叢生状態ではありましたが、非抜歯で全ての永久歯を配列する事が出来ました。
<参考>
「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)