簡単な症例と複雑で難しい症例の違いについて【album 295】

今回は、前歯の歯並びを気にして来院した小学校六年生の小児の症例です。
先ず矯正治療をするに当たって複雑で難しい症例とシンプルで簡単な症例とはどのような違いがあるかについてお話をしてみたいと思います。矯正治療の治療費に関しても治療の難易度によって変わってきます。
顎が小さくて歯が大きい場合歯並びはかなり凸凹(叢生)になり難しそうに見えますが、見た目の歯並びだけでは治療の難易度は分かりません。それ程歯並びが凸凹でなくてもかなり矯正治療が難しく治療期間がかかる場合もあります。
今回の症例は、骨格タイプが1級(上下の顎の前後のずれがない)、下顎の角度が標準的なアベレージタイプ(下顎の角度が90度に近く鰓張りの場合はローアングルタイプで噛む力が強く顔がショートフェイスとなり、それに対して下顎の角度が浅く顔が面長で噛む力が少ないハイアングルタイプがあります。そのどちらでもない中間的なものをアベレージタイプと言います)、骨格的な問題のない歯性(歯の位置や角度が悪い)の不正咬合(交叉咬合)、下顎が左側に2㎜ほどずれている(顎偏位)、下顎前歯部の前歯の並びが凸凹(叢生)となります。
顎のずれ(顎偏位)は放置すると将来顔が歪む顎変形症になる恐れもありますので、早期に治療することが望ましいと思われます。骨格的なずれのある顎変形症は顎切り(外科矯正)の対象となります。誰でも顎を切られるのは望まないと思います。
矯正医から見て、今回のように骨格的な前後の顎のずれがない1級骨格でアベレージタイプは、治療がシンプルで予後の経過も良好になることが多く比較的簡単な症例と考えられます。
当院では、顎が前後にずれている2級症例(上顎前突)や3級症例(反対咬合)の場合、顎のずれを改善する為に奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化する事により出来るだけ非抜歯で治療を行っています。しかし、顎のずれがある症例は、治療が複雑となり治療期間も長くなることが予想されますので、治療費に関しては1級骨格の症例に比べて高額となる事になります。
それでは、具体的な治療法についてご覧下さい。

ポイント
矯正治療を開始するに当たって、骨格分析(セファロ分析)を行い治療の難易度をしっかり把握した上で治療を開始しする事がとても大切です。

photo 1661

上顎の側切歯が共に反対咬合(交叉咬合)となっています。その為、下顎が左に2㎜ほどずれて顎偏位を起こしています。また、1級骨格(上下顎の前後的なずれが無い)ですので、咬合平面を変える治療は必要はありません。そこで前歯部のみの部分的なワイヤー矯正によって、反対の咬み合わせを改善し上下顎の歯を並べました。右下の中切歯は反対の咬み合わせの影響で、咬み合わせの過剰な負担(咬合性外傷)による歯肉の退縮が見られましたが、咬み合わせの改善に伴い歯肉の退縮は改善しました。咬み合わせが悪いと歯に過剰な負担が加わり歯を支える歯槽骨が吸収してしまうと歯並びを改善しても元には戻らなくなるため歯肉の退縮が見られる歯はその原因を考慮してできるだけ早めの対処が肝心です。

photo 1662

骨格に問題はなかったので前歯の部分的なワイヤー矯正で治療を行いました。その為、全部の歯にブラケットをつける治療よりも矯正治療費を少なくすることが出来ました。

photo 1663

骨格に問題はなかったので前歯の部分的なワイヤー矯正で治療を行いました。その為、全部の歯にブラケットをつける治療よりも矯正治療費を少なくすることが出来ました。

photo 1664

矯正治療に伴い一時的に咬み合わせがずれて来ましたが、1級骨格でアベレージタイプなので自然に咬み合わせが密になり安定してきました。ハイアングルタイプだと噛む力が少ないため、自然に咬み合わせが改善しないことがよくあります。この様な場合は、顎間ゴムを使用する治療が必要となります。

photo 1665

矯正治療に伴い一時的に咬み合わせがずれて来ましたが、1級骨格でアベレージタイプなので徐々に咬み合わせが密になり安定してきました。ハイアングルタイプだと噛む力が少ないため、自然に咬み合わせが改善しないことがよくあります。

photo 1666

前歯の反対の咬み合わせが改善するにつれて一時的に咬み合わせが不安定となりましたが、1級骨格ですので自然に下顎の位置が改善してきました。

photo 1667

前歯の反対の咬み合わせが改善するにつれて一時的に咬み合わせが不安定となりましたが、1級骨格ですので自然に下顎の位置が改善してきました。

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

過去の症例はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA