小児矯正の1期治療における優先順位の考察【album 296】

顎骨の成長発育期にある小児の矯正治療において、優先順位(プライオリティ Priority) を考慮する事はとても大切であると思われます。顎骨の成長は上下顎で異なります。顎骨の発育が望める年齢は上顎は10歳位まで、下顎は女子で14歳位まで、男子で18歳位と言われています。従って、上顎骨そのものを成長発育させたい場合、小学校5年生ぐらいまでには前歯の歯並びを改善して出来るだけ前歯を使って十分な咀嚼が出来なければ狭い顎を発育させることは出来ません。また、前歯部の咬み合わせが悪いと下顎の可動域が制限され顎関節の成長発育にも影響を与えると思われます。勿論、奥歯でしっかり噛めるように1期治療を行う事も大切です。
当院では、初めに上顎骨を十分な大きさに拡大して舌が正しい位置に納まることが出来るように口腔筋機能療法(​MFT)を重点的に行っています。舌が正しい位置になければ口腔周囲筋のバランスが崩れ歯並びが不安定になり喉の奥の気道も狭くなることから鼻呼吸の確立を妨げるからです。口呼吸は歯並びを崩すだけではなく口腔の乾燥を招き歯周病や虫歯のリスクを高め、喉の奥の扁桃腺を乾燥させ免疫機能の異常を招くことになる恐れがあります。舌を正しい位置に誘導し、口唇の閉鎖(リップシールド)を行えるようにする事はとても大切です。
今回の症例は、小学校2年の小児です。10歳までに上顎骨の十分な成長発育を促す為には出来るだけ早期に上顎の側切歯の交叉咬合を改善する必要があります。その後、口腔筋機能療法(​MFT)を行い歯列を口腔周囲筋のバランスを整え、よく噛んで上顎骨に十分な刺激を与えるようにすることが重要となります。それでは実際の治療をご覧下さい。

ポイント
顎骨の成長発育の特徴を踏まえ、治療の優先順位を決め効率的な咬合誘導・咬合育成を行う事は、成長発育期にある小児矯正ではとても大切です。

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上顎の大きさが小さいため永久歯が並びません。また、舌の挙上トレーニングを行っても正しい位置に舌を誘導することは困難です。そこで、とりはずし式の拡大床で大きく上顎を広げ舌が収まる十分な口蓋の大きさを確保しました。この治療と並行して口腔筋機能療法(​MFT)も開始しています。その後前歯の交叉咬合を改善する為にワイヤー矯正を行っています。この事により下顎の動きの制限が解除され十分な咀嚼が出来るようになります。しっかり唇を閉じてよく噛んで咀嚼することは顎骨や顎関節の正常な成長発育を促す為にはとても大切です。

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出来るだけ早期に前歯部の交叉咬合を改善し十分な咀嚼を行う事は顎骨の成長発育にとても大切です。

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出来るだけ早く前歯部の交叉咬合を改善する為に奥歯の高さ(咬合高径)を挙上していますので、一時的に前歯がかみ合わなくなります。しかし、交叉咬合が改善したら口腔筋機能療法(​MFT)を行う事で自然に閉じてきます。

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出来るだけ早く前歯部の交叉咬合を改善する為に奥歯の高さ(咬合高径)を挙上していますので、一時的に前歯がかみ合わなくなります。しかし、交叉咬合が改善したら口腔筋機能療法(​MFT)を行う事で自然に閉じてきます。

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下顎は、上顎との咬み合わせを考慮して拡大床で広げて歯槽骨形態修正を行い前歯を歯を並べています。

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