顎のずれ(顎偏位)は出来るだけ早期に治療しよう【album 298】

成長発育期にある小児において顎のずれ(顎偏位)を放置すると何れは顔が歪む顎変形症に発展する事があります。また、重度の顎変形症は、顎切り(外科矯正)が必要となる恐れがあります。
今回の症例は、前歯(側切歯)の咬み合わせが反対で下顎が左側に2㎜ほどずれ(顎偏位)てしまった小学校3年生の小児です。
矯正学的には顎偏位を伴う上顎両側側切歯交叉咬合の症例となります。
交叉咬合は必ずしも顎偏位を起こしませんが、今回の症例のように反対の咬み合わせの側切歯により下顎が誘導され左右どちらかにずれを生じることも度々あります。また、交叉咬合は下顎のずれを起こすだけではなく前歯が引っかかり食べにくいので、あまり噛まないで食べるようになります。その為、咬合力が顎の骨に加わらず顎骨や顎関節の正常な成長発育を阻害する可能性があります。更に、顎関節症を発症するリスクも高まります。
顎のずれの他の原因としては、左右の奥歯の高さ(咬合高径)によるものもあります。顎は奥歯のかみ合わせの高さが低い方へずれる傾向があります。顎の骨の成長発育は必ずしも左右対称ではありませんので、左右の高さに差が出来ることもあります。この場合、経過を見ていると奥歯の高さの左右差が改善され自然に改善される場合もあります。但し、顎の骨の成長発育が終了した年齢になった人は奥歯の高さ(咬合高径)を矯正治療により改善する必要があります。当院では、顎偏位の原因が何処にあるか慎重に診断して、場合によっては左右の咬合高径だけではなく奥歯のかみ合わせ(咬合平面)の違いを修正する治療を行うようにしています。
顎偏位の原因は色々なものが複合的に関連して起こる場合もありますので、ただ様子を見ているだけではなく顎のずれに気が付いたら出来るだけ早期に矯正歯科医院でしっかりした診断をして、矯正治療を開始することが望ましいと思われます。
それでは実際の治療経過をご覧下さい。

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顎の大きさが小さいので取り外しの拡大床で顎の大きさを広げ舌が口蓋に収まる大きさを確保し、ワイヤー矯正で歯並びを整え顎偏位の原因となっている前歯のかみ合わせと左右の咬合平面並びに咬合高径を整え顎偏位を改善しました。

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顎の大きさを確保する為に拡大床で顎を広げ、ワイヤー矯正で反対の咬み合わせを改善しました、但し、今後萌出する犬歯のスペースが未だ足りませんので奥歯を後方に移動する必要があります。

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顎偏位を改善する為に、奥歯の高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化する治療を行っています。

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咬合平面と咬合高径を適正化して、下顎の前方成長を誘導しています。

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下顎は、上顎に合わせて拡大しワイヤー矯正で歯並びを整えました。更に右側の犬歯のスペースが不足していますので、この後に右下の第二乳臼歯を削合して右下の第一小臼歯を後方に移動させる計画を立てています。乳歯が混在する混合歯列期において、乳臼歯を削合する事は、スペース確保に簡単で有効な手段です。顎の成長発育期にある小児矯正において適切な咬合誘導・咬合育成は、不正咬合の根本原因を改善する為にはとても重要です。

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