出っ歯と前歯の反対のかみ合わせがが気になる album 184
今回の症例は、出っ歯と前歯の反対のかみ合わせが気になる8歳の小児です。小児期の不正咬合は、顎の骨や関節が成長発育途上でありますので適切な矯正治療による介入をする事によりその根本的な原因から改善する事が出来る可能性があります。
それでは矯正学的な問題点について考えてみます。
①上顎骨の成長発育が不十分で、歯の大きさに対して顎の大きさが小さい(ディスクレパンシー)
②上顎右側の側切歯のかみ合わせが反対(上顎右側側切歯の交叉咬合)
③習慣性の口呼吸(舌根が沈下して気道が狭くなっている)→この事により睡眠障害(いびき)と上顎骨の劣成長が起こっている
④右側の奥歯のかみ合わせが低い(咬合高径に左右差が見られる)→下顎はかみ合わせの低い方へずれる傾向があります(顎偏位の原因の一つ)
⑤奥歯のかみ合わせ(咬合平面)が、顎関節の動きに対して不適切→当院は、顎関節の動き(顆路)に対して適切な咬合平面を作り上げ下顎の位置をコントロールしています
⑥口腔周囲筋のバランスが崩壊→舌が沈下して上顎の歯列を内側から支える事が出来ないため、上顎成長発育が阻害されている(上顎骨劣成長の原因)。また、習慣性の口呼吸により常に口がぽかんと開いている(リップサポート不足は出っ歯の原因の一つ)
それでは以上6点の問題点を解決する事により、顎と顎関節の正常な発育を誘導する為に行った実際の治療をご覧下さい。
今回は口腔周囲筋のバランスをとるために筋機能矯正装置(トレーナーシステム)を使用しました。
<参考>
・筋機能矯正装置とは、口腔周囲筋の力を有効活用する機能と、異常な口腔周囲筋の力を排除する機能、双方の機能を持ち合わせた矯正装置の総称です。
・ディスクレパンシーとは、歯と歯列弓(基底骨)の大きさに不調和があること→歯並びが凸凹(叢生)の原因
<追伸>
当院の「歯を抜かない矯正歯科の症例写真」です。
このalbumシリーズのコンセプトはalbum1に掲載しています。
歯列矯正治療をお考えの方、是非ご覧ください。
「albumシリーズのコンセプト(2019年3月17日掲載)」
photo 952
抜歯をしないで全ての歯を並べるには顎の大きさが足りません(ディスクレパンシー)。初めに、拡大床により歯槽骨の形態修正を行い顎を広げました。その後左右の奥歯の高さを調整して筋機能矯正装置(トレーナーシステム)で咬合誘導並び咬合育成をしています。永久歯が並ぶためのスペースを確保する事が出来ました。
photo 953
下顎も上顎の幅に合わせ顎の大きさを拡大しました。その後、上顎の配列が終了するまでリテーナーを使用しました。
photo 954
左上の側切歯の交叉咬合を改善し奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)を修正する事により下顎の位置を3次元的に誘導して治療いたしましたが、その後下顎が右側にシフトしてきました。やはり上顎骨の発育に左右差があり咬合高径が変化しているようです。注意深く経過観察して顎偏位が進行するようなら、2期治療が必要となる可能性があります。
photo 955
奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化して、下顎の位置を誘導しています。
photo 956
奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化して、下顎の位置を誘導しています。
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奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化して、下顎の位置を誘導しています。
photo 958
奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化して、下顎の位置を誘導しています。
<補足>
矯正治療には、いくつかのリスクと副作用が有ります。
矯正治療をお考えの方は、下記の記事をご参照ください。
「矯正歯科治療で生じうるリスクや副作用について」(クリックHere)
<参考>
「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)
「顎が小さくて歯が並ばない時の対処法」(クリックHere))