反対咬合の治療は出来るだけ早期に album 203

成長発育途中の小児を扱う小児矯正歯科治療においてとても大切な事は、上下の顎の発育パターンには大きな違いがあるという事です。顎の発育に関しては、上顎は神経型と同じで、下顎は一般型と同じ発育の仕方をします。すなわち、上顎は4〜5歳で8割方完成して10歳頃まで成長し、下顎は0〜3歳と13〜20歳頃に2回一気に成長する時期が来ます。従って、反対咬合の治療を行う上で矯正歯科が介入できるのは3歳以下は治療が困難ですので、何とか筋機能矯正装置(ムーシールド、トレーナーシステム等)を使った治療が出来る3歳ぐらいからになります。しかし、下顎の成長は身長などの発育と同じですので少なくとも女子は14から15歳歳ぐらい、男子は18から19歳ぐらいまでは下顎の成長を見ていく必要があると考えます。下顎の成長は遺伝的な要因がありますので両親のどちらかでも反対咬合の場合は特に注意が必要です。但し、下顎の成長を促す要因としては口腔周囲筋(口の中や唇などの周囲の筋肉)や舌の位置や癖等の影響が多くあります。そこで当院では、出来るだけ早期に口腔周囲筋のバランスを改善して、低位舌を改善し異常な嚥下癖を治すようにしています。また、舌の位置が低位になる原因としては口呼吸が有ります。舌の位置が低いと如何しても下の前歯を前方に押し出し下顎を前方に誘導することになり下顎の発育を助長させます。この様な状態を放置すると、やがては下顎がしゃくれて骨格的な問題になってしまい顎切り(外科矯正)を併用した治療の必要が出てきます。当院では、反対咬合の治療に当たっては、口腔筋機能療法(MFT)と筋機能矯正装置(ムーシールド、トレーナーシステム等)を出来るだけ早期から併用して行う事により、顔が変形して骨格的な問題に発展しないように咬合誘導・咬合育成を行っています。
それでは実際の治療をご覧下さい。

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初診時、6歳の小児患者さんです。下の前歯のかみ合わせが反対です。その為に下顎が前方に誘導されて機能的な反対咬合を呈しています。このまま放置すると下顎の前方成長が促され何れは顎がしゃくれて骨格的な問題に発展する可能性があります。そこで、奥歯のかみ合わせ(咬合高径)を適正化して筋機能矯正装置(ムーシールド)を使用して口腔周囲筋のバランスを改善するように治療しました。その結果、上顎の発育が促され下顎の位置は後退し反対咬合が改善しました(1期治療)。反対咬合の治療は、下顎の成長発育が20歳ぐらいまで続きますので、この後も十分な咬合誘導・咬合育成を継続して行う必要があります。また、下顎の成長発育が終了する時期に仕上げの治療(2期治療)が必要となる場合もあります。反対咬合の治療のポイントは、出来るだけ早期に治療を開始して下顎の前方成長を如何に抑制できるかにあると考えます。出来れば顎切りは避けたいものです。

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下顎の位置が後退して上顎の成長発育が促され反対咬合が改善して行く様子をご覧下さい。

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下顎の位置が後退して上顎の成長発育が促され反対咬合が改善して行く様子をご覧下さい。

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下顎の位置が後退して上顎の成長発育が促され反対咬合が改善して行く様子をご覧下さい。

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反対のかみ合わせの下の前歯に注目して下さい。反対の前歯には異常な咬合力が加わります。その為、歯を支える歯槽骨が吸収して歯肉が退縮しています(咬合性外傷)。このままではこの歯の寿命は短命になってしまいます。反対咬合の治療により適正な咬合力が加わるようになり、歯肉退縮の進行を抑え改善する事が出来ました。この様に出来るだけ早期に反対咬合を改善する事は下顎の前方成長を抑制する事だけではなく、下の前歯に加わる異常な咬合力を適正化して歯を支える組織を保護することが出来ます。

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舌の挙上訓練と筋機能矯正装置の使用により、低位舌が改善し上顎の成長発育が促され自然に歯列が拡大し永久歯の前歯が並びました。

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反対のかみ合わせと口腔周囲筋のバランスが改善され、下の前歯が自然に並んでくる様子をご覧下さい。

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

過去の症例はこちら

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