子供の出っ歯(上顎前突)の治療はできるだけ早めに album 214

出っ歯(上顎前突)は、上の前歯が飛び出しているだけではないのです。実際は、下顎の後退によって相対的に出っ歯に見えることが多いのです。下顎の骨の成長発育は身体の成長発育と相関関係が見られますので、身長が伸びている子供の時期にできるだけ早めに矯正歯科治療を始める事により下顎の前方成長を促し出っ歯を根本的に改善出来るのです。但し、上顎骨そのものが過剰に前方発育する骨格的な上顎前突は外科矯正や抜歯矯正で対処するしか有りません。治療に当たってはしっかりした診断が必要です。
それでは、出っ歯を気にして来院した9歳の小児の実際の治療をご覧下さい。
矯正学的な問題点は
①上顎前突・・・セファロによる骨格分析では上顎骨の過成長は見られず、むしろ標準より劣成長であることが解りました。下顎の後退による相対的な出っ歯(上顎前突)であると診断されました。
②かみ合わせが深すぎる(過蓋咬合)・・・かみ合わせが深すぎることにより、下顎の前方成長および顎関節の圧迫が見られます。このままでは将来顎関節症を引き起こすリスクがあります。
③叢生・・・上下顎共に全ての永久歯が並ぶだけのスペースが足りません。このままでは更に上の前歯が押し出され出っ歯が悪化します。また、八重歯になる可能性があります。
<当院の治療方針>
顎の大きさを広げ舌が上顎の口蓋に収まるスペースを確保し、歯列の周囲の筋肉のバランスを整える事により鼻呼吸を促し、安定した歯列を確保する。また、口腔筋機能療法(MFT)を併用し筋機能矯正装置(トレーナーシステム)によって異常嚥下癖と舌癖の改善を行う。

下顎の前方成長を促す事により、非抜歯で出っ歯(上顎前突)を改善する事が出来ました。子供の矯正治療でできるだけ早めに矯正治療の介入を行い、適切に咬合誘導・咬合育成を行う事はとても大切と考えています。出っ歯は骨格が定まるまで様子を見ましょうと仰る先生もいらっしゃいますが、骨格が定まって成長発育が望めない状態からの治療開始では、非抜歯矯正治療では対応が難しい場合が多く見受けられます。従って、顎の成長発育が終わってからの治療は、外科矯正(顎切り)や抜歯矯正で対応することになります。

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上顎の前歯の歯軸を舌側に修正し、奥歯の高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化する事により下顎の前方成長を促す事が出来ます。下顎が前方に成長発育していく様子をご覧下さい。1期治療終了後は、口腔筋機能療法(MFT)を併用し筋機能矯正装置(トレーナーシステム)を用いています。

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上顎の前歯の歯軸を舌側に修正し、奥歯の高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を適正化する事により下顎の前方成長を促す事が出来ます。下顎が前方に成長発育していく様子をご覧下さい。口腔筋機能療法(MFT)を併用し筋機能矯正装置(トレーナーシステム)を用いています。1期治療終了後は、口腔筋機能療法(MFT)を併用し筋機能矯正装置(トレーナーシステム)を用いています。

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1期治療でしっかり犬歯のスペースを創っていますので、自然に筋肉の力で八重歯が改善しました。

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未だ左上の犬歯は萌出していませんが、十分なスペースがあり筋肉のバランスも良好なので理想的な位置に犬歯が配列されること予想されます。

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深い咬み合わせ(過蓋咬合)が改善し、奥歯の左右の咬合平面が整っていく様子をご覧下さい。

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1期治療で顎を広げ奥歯を後方に移動し全ての永久歯が非抜歯で配列できるように準備する事により、ゆったりとしたバランスの良いアーチを作ることが出来ました。舌のスペースも十分です。

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深すぎる咬み合わせ(過蓋咬合)を改善する事により前歯が前方に移動し、全ての永久歯を非抜歯で配列することが出来ました。初めに下顎のアーチも側方に拡大しています。

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

過去の症例はこちら

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