受け口(反対咬合)の治療はなるべく早めに始めよう album 218

反対咬合の原因は、遺伝的な要因とそれ以外(低位舌、上下口唇周囲筋のアンバランス、下顎を出す癖、生え代わりの時期に萌出した永久歯のかみ合わせが逆になり下顎が前方に誘導される、異常な嚥下癖、口呼吸等々)に分けることが出来ます。遺伝的な要因については矯正歯科治療ではどうすることもできませんが、下顎の成長は身長の伸びと相関関係がありますので、出来るだけ早期に反対のかみ合わせを改善する事により骨格的な問題(顔の変形)を最小限にして外科矯正(顎切り)を回避するようにしています。当院では、自分の子供にしたくない治療は出来るだけ避けたいと考えていますので、骨格的な問題があっても奥歯の高さ(咬合高径)と奥歯のかみ合わせ(咬合平面)を変えることにより下顎の位置を後方に下げる治療を行い、出来るだけ外科矯正治療を行わないようにしています。

受け口(反対咬合)を放置して置くと
①前歯でかみ切れないために、食べる時に前歯を使わなくなり前歯の歯根からの刺激が上顎骨に伝わらなくなります。その為に上顎の発育が悪くなり反対のかみ合わせが助長されていきます。(骨格的な問題が大きくなり、外科矯正治療が必要となる恐れがあります)
また、咀嚼が不十分だと消化不良が悪くなり、成長発育期にある小児の身体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
②前歯と舌の関係で発音するサ行やタ行の発音が不明瞭になる恐れがあります。反対咬合の患者さんの多くに低位舌も見られ、余計に舌っ足らずな(滑舌が悪い)しゃべり方になることが多いと思われます。
③下顎の動きが制限されますので、顎の関節に不自然な力が加わり顎関節症を引き起こす恐れがあります。
④下顎の位置は前進の姿勢を保つのに密接な関係があります。その為、全身の筋肉のバランスが崩れ色々な不定主訴(腰痛・肩こり・頭痛等)を引き起こす原因となる恐れがあります。

<参考>

なぜ歯並びを治した方が良いの?

歯並びが悪い(不正咬合)とは?

子供の矯正治療をスタートする目安 その 1

子供の矯正治療をスタートする目安 その 2

今回は、8歳の反対咬合の小児の治療について見ていきます。主訴は、前歯のかみ合わせが逆で気になるということです。出来るだけワイヤー矯正はしたくないとの希望がございましたので、取り外しの装置で治療を行いました。治療前後の写真をご覧下さい。

それでは実際の治療経過について見ていきます。

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奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)が低いため、下顎が前方にオーバーローテーションして出ています。また上顎骨の成長発育が不十分です。そこで、奥歯のかみ合わせを高くして上顎を拡大してから前歯を先方に移動しました。また、低位舌が見られましたので口腔筋機能療法(MFT)を併用し、特に舌を上げるトレーニングを中心に行っています。

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前歯の前方移動に伴い下顎が徐々に後方に移動して行く様子をご覧下さい。

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前歯の前方移動に伴い下顎が徐々に後方に移動して行く様子をご覧下さい。

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前歯の前方移動に伴い下顎が徐々に後方に移動して行く様子をご覧下さい。

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前歯の前方移動に伴い下顎が徐々に後方に移動して行く様子をご覧下さい。

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低位舌改善のためのトレーニングを開始する前に、上顎の口蓋にを拡大し舌が収まるスペースを確保することは大切です。この事により舌が正しい位置に誘導されていきます。低位舌は、受け口を助長するだけではなく、発音にも大きく影響します。また、舌根が沈下して喉の奥の気道が狭くなり口呼吸を誘発します。習慣性の口呼吸は百害あって一利無し、鼻呼吸への変換が大切と考えています。口呼吸は色々な全身疾患との関連が認められています。唇を閉じて(リップシールド)奥歯をかみしめないで、鼻呼吸をする事は顎関節症を予防することにもつながります。
今から萌出する永久歯の側切歯が並ぶためのスペースが足りません(叢生)。また、受け口を改善するためにも上顎の大きさを前後左右に拡大する必要があります。この事は八重歯予防の為、永久歯の犬歯が萌出する前に十分そのスペースを確保する事にもつながります。

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成長発育期にある小児の下顎はどんどん大きくなります。受け口(反対咬合)は、出来るだけ早めに矯正治療をスタートさせる事が大切です。

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

過去の症例はこちら

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