子供の矯正(小児矯正)治療における1期治療の目的とメリット album 194

子供の矯正(小児矯正)治療は、1期治療と2期治療の2段階に分かれています。

1期治療・・・乳歯と永久歯が生えている時期(混合歯列期)に行う治療のことです。年齢は5、6歳頃~10、11歳の間に行う矯正歯科治療です。本格的な矯正歯科治療(2期治療)に入る前の準備的な治療とも言えます。(昨年から、ブラケットとワイヤーを使用しない透明で目立たないマウスピース型矯正装置であるインビザラインが、混合歯列期にも使用可能になりました。)

2期治療・・・11、12歳前後以降で全ての乳歯が生え代わり永久歯が生えそろってから行う治療のことです。全体的なワイヤーの矯正装置(マルチブラケット装置)を用いて永久歯の歯並びやかみ合わせをしっかりと作り上げる本格的な矯正歯科治療です。最近では、ワイヤーやブラケットを使用しない目立たないインビザライン等で行うことも多くなりました。

今回は、こどもの矯正歯科治療(1期治療)の目的、メリットについて考えてみたいと思います。

① 顎前突(受け口)や上顎前突(出っ歯)、顎偏位(上顎と下顎の真ん中がずれている)等は何もしないで放置すると顎が変形して骨格的な問題に発展することがあります。一期治療では、成長発育期に有る小児は骨格的に上下の顎のバランスが悪い場合でも、適切な矯正歯科治療の介入により咬合誘導・咬合育成を行うことにより顎や顎関節の正常な成長発育を促してバランスを整えることができます。これが1期治療の一番大きなメリットだと思われます。成長発育期のうちに上下の顎のバランスを整えておくことで、2期治療が簡単になったり、顎切り(外科矯正)のリスクが少なくなります。また、抜歯する事なく非抜歯矯正治療で満足のいく歯並びを得る事が出来る可能性が増します。

② 歯列を広げて(歯槽骨の形態修正)歯が並ぶスペースを確保する・・・この事により将来抜歯矯正治療を回避できるようになる可能性が増します。

③奥歯のかみ合わせを整え正常な顎関節や顎の成長発育を促す事が出来ます・・・当院では、奥歯のかみ合わせ(咬合平面)と奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)を適正化する治療により顎の関節に異常な力が加わらないようにして(顎関節症のリスク減少)、機能的なかみ合わせを作り上げるようにしています。

④ 永久歯の萌出スペースを確保することにより、正しい位置に永久歯を誘導することが出来ます。・・・例えば、混合歯列期の最後に永久歯の犬歯が萌出してきますが、その萌出スペースが不足していると八重歯になってしまいます。1期治療で永久歯の犬歯の萌出スペースを確保することにより八重歯を回避する事が出来ます。

⑤口腔の筋肉のバランスを整え、機能的な歯並びを獲得することにより不正咬合の根本原因から改善する事が出来ます。・・・当院では、1期治療で口腔筋機能療法(MFT)並びに筋機能矯正装置(トレーナーシステム)を取り入れて、正しい舌のポジションを習得させ唇を閉じる筋肉を整えることにより口呼吸から鼻呼吸への変換を促すようにしています。この事により、安定した歯並びを確立する事だけではなく口呼吸がもたらす全身への悪影響を排除して健康増進につながれば幸いと考えています。

それでは初診時小学校2年生の小児に行った実際の1期治療の症例をご覧下さい。

<参考>

「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)

「顎が小さくて歯が並ばない時の対処法」(クリックHere))

子供の矯正治療をスタートする目安 その 1
「生え代わりの時期が来ても、上顎の乳前歯の間に隙間(発育空隙)がない時」
(クリックHere)

子供の矯正治療をスタートする目安 その 2
「不正咬合に気が付いたとき」
(クリックHere)
なぜ歯並びを治した方が良いの?

歯並びを治すと色々と良いことが・・・(矯正治療のメリット)
(クリックHere)

歯並びが悪い(不正咬合)とは?
不正咬合の種類と問題点
(クリックHere)

photo 1019

顎の大きさが小さく後続永久歯の萌出スペースが足りません。初めに取り外しの拡大床により歯槽骨の形態修正を行い顎の大きさを広げました。その後、部分的なワイヤー矯正(2×4システム)で前歯の歯並びを整え奥歯を後方移動することにより永久歯の犬歯が萌出するためのスペースを確保しました。この1期治療により八重歯を回避することが出来ました。

photo 1020

下顎も永久歯の犬歯が萌出する為のスペースが足りません。拡大床を用いて顎の大きさを広げ永久歯の犬歯が並ぶ為のスペースを確保しました。

photo 1021

奥歯のかみ合わせ(咬合平面)並びに奥歯の高さ(咬合高径)を適正化する事により機能的で顎関節を保護するかみ合わせを確立する事が出来ました。下顎が後方に押し込められ舌根が沈下して気道が狭められ習慣的な口呼吸が見られましたが、下顎を前方に導き舌を挙げるトレーニングと、唇を閉じる筋肉を整える口腔筋機能療法(MFT)治療を併用することにより習慣的な口呼吸から鼻呼吸へ転換する事が出来ました。

photo 1022

奥歯のかみ合わせ(咬合平面)並びに奥歯の高さ(咬合高径)を適正化する事により、機能的で顎関節を保護するかみ合わせを確立する事が出来ました。下顎が後方に押し込められ舌根が沈下して気道が狭められ習慣的な口呼吸が見られましたが、下顎を前方に導き舌を挙げるトレーニングと、唇を閉じる筋肉を整える口腔筋機能療法(MFT)治療を併用することにより習慣的な口呼吸から鼻呼吸へ転換する事が出来ました。

photo 1023

深い咬み合わせにより下顎の自由な動きが制限されていましたが、上の前歯の歯軸を改善し咬合平面並びに咬合高径を適正化する事により下顎を前方に適応させることが出来ました。この事により顎関節の圧迫を少なくし正常な下顎の動きができる自由度を確保し、正常な顎の発育を促すようにしました。口腔内が広くなり発音も改善されました。

photo 1024

深い咬み合わせにより下顎の自由な動きが制限されていましたが、上の前歯の歯軸を改善し咬合平面並びに咬合高径を適正化する事により下顎を前方に適応させることが出来ました。この事により顎関節の圧迫を少なくし正常な下顎の動きができる自由度を確保し、正常な顎の発育を促すようにしました。口腔内が広くなり発音も改善されました。

photo 1025

初診時には、下顎が左に2㎜ほどずれて顎偏位が見られました。1期治療により下顎の偏位が改善できました。この事により顔が曲がる顎変形症になるリスクを回避することが出来ました。治療前後の写真と治療経過の写真をご覧下さい。

<補足>
矯正治療には、いくつかのリスクと副作用が有ります。
矯正治療をお考えの方は、下記の記事をご参照ください。
「矯正歯科治療で生じうるリスクや副作用について」(クリックHere)

 

過去の症例はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA