今回は、反対のかみ合わせを気にして来院した小学校2年生の小児です。
矯正学的な問題点は
①反対咬合(前歯のかみ合わせが逆)
②上下顎叢生(全ての永久歯が並ぶのに必要な顎の大きさが小さいため、歯並びが凸凹になる)
ということです。
当院での治療方針は
①奥歯のかみ合わせの高さ(咬合高径)が低いために下顎がオーバーローテーションして反対咬合になっていますので、咬合高径を高くして反対のかみ合わせを改善する。この事により、発育不全の上顎の成長を促す。
②上顎は後続永久歯の側切歯と犬歯の萌出スペースが足りないので、前歯を前方に押し出してスペースを創り上顎の成長発育を促しながら反対咬合を改善する。下顎は、顎の幅が足りなく側切歯と犬歯が並びそうにないので側方に顎を広げスペースを確保する。
小児矯正の1期治療においては、先ず前歯4本(中切歯と側切歯)の歯並びと奥歯(6歳臼歯)のかみ合わせを改善する事が行われますが、その後に萌出してくる犬歯の萌出スペースを確保しておかないとやがて八重歯になってしまいます。犬歯のスペースを確保しないで1期治療を終了する事になれば最終的には八重歯となり2期治療が必ず必要となってきます。場合によっては犬歯を並べるために2期治療で犬歯の後ろの健全な永久歯(小臼歯)を抜歯して並べるような抜歯矯正治療を選択するようになります。
当院ではなるべく歯を抜かない非抜歯矯正で全ての歯を並べるために1期治療においては十分に後の成長発育を促す治療を心がけています。
小児矯正治療において、適切な咬合誘導並びに咬合育成はとても大切です。
ワイヤー矯正による1期治療終了後は口腔周囲筋のバランスを整える事により下顎の成長を抑制することが出来ますので、筋機能矯正装置(ムーシールド、トレーナーシステム等)を継続して使用するようにしています。
それでは実際の治療をご覧下さい。
<参考>
「顎が小さくて歯が並ばない時の対処法」(クリックHere))
photo 1088
反対のかみ合わせを改善しながら、上顎の成長発育を誘導するように治療しています。
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側切歯と犬歯の並ぶスペースがありません。前歯を押し出すことによりそのスペースを創り出しながら反対のかみ合わせを改善します。
photo 1090
犬歯のスペースが足りません。上顎を前方に成長発育するように誘導してそのスペースを創り出しています。
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側切歯と犬歯の並ぶスペースが足りません。拡大床で歯並びのアーチを広げ、その後第1乳臼歯を削って(ディスキング)犬歯のスペースを創りました。小児矯正においてこの様な咬合誘導・咬合育成はとても大切です。特に反対咬合の小児は、下顎の成長をなるべく抑えるようにしていくことが大切です。その為には、歯並びを治すだけではなく口腔周囲筋のバランスを改善する事、特に低位舌を改善するトレーニングは大切です。
<参考>
「矯正症例集閲覧に当たって」(クリックHere)